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ND1およびND201が働くメカニズム

服部らは2000年に適切な糖鎖の修飾により細胞表面のレセプタータンパク、薬物に対して強い会合能を見出しました。結果として“イソギンチャク効果”と“ナノクラスター効果”を提唱できました。
(参考文献:(1)〜(3))

われわれは既に知られていたLeeらによる“糖クラスター効果”すなわち、糖誘導体とレセプター間の多重認識効果により、糖分岐数の指数関数的に会合性を増強できる事が確認されていましたが、 これを葉酸誘導体と葉酸レセプター間の認識能に拡張して同様の結果を得ることが出来ました。

また、これらシクロデキストリン環上の置換数を1置換から2置換、そして7置換と変化させると共に、アーム長さの延長を行ない構造変化の影響を検討する中で、このシクロデキストリン誘導体と薬物の間の誘導適合的な コンホメーション効果としての議論の途路に“イソギンチャク効果”の発見があります。

ナノクラスター効果の具体例として、ヘキサキスガラクトース分岐シクロデキストリン(6)に対し、ラットの肝細胞を固定化したバイオセンサーによる評価では2.5×1010 M-1の会合定数を観測し、 ついに天然糖鎖の値を超えて、抗原抗体反応レベルでの肝細胞との相互作用を見出しました。その評価結果をFig.1に示します。

すなわち、Fig.1に示す大きな値が得られた理由は、肝細胞表面のレセプターASGP-BPの6個の結合サイトと6個のガラクトースが空間的(トポロジカル)に配置条件を満たして、多重の相互作用を行うことが想定されました。 分子モデリングによる考察では、Leeらのいう黄金のトライアングル条件をトポロジカルに満たし、強力な会合を行ったと考えられます。同じくLeeらの考察から生まれた「糖クラスター効果」すなわち会合能力は相互作用数の 指数関数的に増強されることを、我々は図らずも具現化したものと考えられます。(Fig.2)

一方、Fig.3に示すような当初のアームの短い7分岐ガラクトースシクロデキストリンで観測された“イソギンチャク効果”は、薬物の封じ込め効果(kdの減少)でした。速度論的な観察結果から、アームのコンホメーション変化 により、酵素反応の誘導適合のように薬物を取り込んだシクロデキストリン誘導体があたかもイソギンチャクが魚を捕らえるように、7分岐糖修飾シクロデキストリンも一度捉えた薬物を放さない効果を表現しています。

ところで、がん細胞特有のレセプターに対する特定構造の認識タグをキャリアに持たせて、がんをターゲットする考え方は、これまでにも免疫抗体、トランスフェリン、葉酸、さらにはインテグリンなどで試みられてきました。 服部らは、これまでの糖鎖認識での驚異的な会合結果を踏まえて、多数の葉酸タグを適切な3次元構造でがん細胞に近づけることができれば、同様に強力な会合を実現できるのではないかと着想して鋭意研究しました。 がん細胞表面の葉酸レセプターの構造については未だ明確ではありませんが、生物的なアナロジーからこのように推定しました。経験的にアーム長さはアミノカプロン酸ダイマーとして、7分岐葉酸シクロデキストリン誘導体を 調製しました。基台のアミノカプロン酸ダイマーを分岐とするシクロデキストリンは前節のプレカーサーと同一物です。これは、β‐シクロデキストリンを出発原料として7段階67%の収率で得られました。これと葉酸の 縮合反応は、仕込みモル比、反応時間の検討により、最良の条件を探査しGPCゲルによる精製操作を含めて29%収率で調製ができました。β-シクロデキストリンからの全収率は約20%でした。

葉酸シクロデキストリン化合物の機能評価は、結腸がん細胞Caco-2及び口腔がん細胞KBを用いて行いました。Caco-2細胞を固定化したSPRバイオセンサーによる会合定数の評価では、5.1×109 M-1の値が得られました。 抗原抗体反応レベルの強烈な会合が観測されました。また、抗がん剤ドキソルビシンを固定化したバイオセンサーの測定から3.5×107 M-1が得られました。大体106 M-1 以上あれば デリバリーに問題はないとされていますので、満足な数字と思われます。

この葉酸シクロデキストリン(16) が、正常細胞、ここではラット肝細胞を用いてその相互作用が殆ど認められないことを、会合曲線から確認しました。同じ条件下でCaco-2がん細胞と16は相互作用が十分に見られました。 また、シクロデキストリンの環への葉酸導入数を、0、1、2、7、と変えて葉酸結合タンパクFBPに対して、その相互作用を会合曲線から比較しました。葉酸をもたない3種のシクロデキストリンでは、全く相互作用が 見られないのに対し、1個ないし2個の葉酸を導入したシクロデキストリンでは、FBPに対し微弱な相互作用を示しました。7個の葉酸を導入したシクロデキストリン (16) については強い会合挙動を示しました。

フローサイトメトリーおよび共焦点レーザー走査型顕微鏡により口腔がん細胞KBへの取り込みを観察しました。フローサイトメトリーでは、蛍光ラベル化した葉酸シクロデキストリンはKB細胞への4℃の条件下でも十分な取り込みが見られました。 この場合、フリー葉酸を添加すると阻害効果が明確に示されました。葉酸が相互作用に関与していることを実証しました。37℃の条件下では蛍光強度の顕著な上昇がみられ、強烈な取り込みを示唆した。(Fig.6)

このように葉酸単体の添加によっても殆ど蛍光強度の低下がなく、これ自体も強固な取り込みを支持しています。β-シクロデキストリンでは全く取り込みは観測されませんでした。

共焦点レーザー走査型顕微鏡測定により、同じく蛍光ラベル化した葉酸シクロデキストリン誘導体(16)はKB細胞との1時間の培養で、細胞自体が真っ赤になり、蛍光照射しなくても明らかに認められるほどに 細胞内取り込みが観察されました。とくに核部分にも十分に取り込みが見られました。抗がん剤の細胞内動態としては都合が良いと考えられます。 従って、葉酸修飾シクロデキストリン(16)は、ターゲティングDDSキャリアとしての可能性は大いに期待できます。しかし、未だ問題点も多くあります。In vitro実験をさらに様々ながん細胞に拡張する 必要があります。また抗がん剤を拡張する必要があります。In vivo 実験で安全試験、毒性試験、薬効試験、最適投与条件の探査、体内動態について明らかにする必要があります。

参考文献:

  1. (1) 服部憲治郎、”シクロデキストリン誘導体の新たな機能”、薬剤学、68(6),398-406(2008).
  2. (2) K.Hattori, T.Koshigoe, T.Takeuchi, R.Onodera, K.Muraki, H.Akiyama, H.Arima, M.Arizono, K.Uekama, Synthesis and Evaluation of Folate-Modified Cyclodextrins, The 14th International Cyclodextrins Symposium, Proceedings, p94-97, May 8-11, 2008, Kyoto, Japan.
  3. (3) 服部憲治郎、がんターゲティングDDSキャリヤの開発、化学工業、59(4),293-299 (2008).


 
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